クラウド会計で経理がラクになる6つの理由

[記事公開日]2017/10/23
[最終更新日]2018/12/10

「クラウド会計を使うと今まで1時間かかっていたことが、10分で終わる」これが税理士である私の感想です。初めて使ったときは「これはすごい!」と感動しました。こんなに便利ならお客様におススメしない理由はないと考えています。クラウド会計は経理がラクになる・業務効率化につながることをご紹介します。

なお、今回、ご紹介するクラウド会計は当事務所で取り扱っているマネーフォワードクラウド・freeeのことです。

1 クラウド会計で経理がラクになる6つの理由

■理由1:会計入力の自動化

ネットバンキング対応の銀行口座・クレジットカードの取引明細を自動取得します。「自動取得します」ではわかりにくいので、会計入力方法を使って、インストール型の会計ソフトとクラウド会計を比較します。

*インストール型の会計ソフト:インストールしたパソコンだけで使える会計ソフト

 クラウド会計:インターネットにつながればどこでも使える会計ソフト

<インストール型>

通帳を1行ごとに、入力します。入力する項目は次の4点になります。

【①日付(10月1日)、②勘定科目(通信費)、③摘要(NTT)、④金額(10,000円)】

売掛金の入金が多い、買掛金(仕入・外注費)の支払いが多いように取引量が多いほど会計入力の手間がかかります。

<クラウド会計>

クラウド会計では次の3点は自動取得します。

【①日付(10月1日)、②摘要(NTT)、③金額(10,000円)】

「あれ?勘定科目は?」となりますが、ココがクラウド会計のすごいところです。実は勘定科目を取引内容から「自動提案」してくれます。NTTという取引内容から「通信費」と提案します。さらに「仕訳学習機能」があり、通信費で登録すると次回からNTT=通信費と仕訳ルールを学習します。

ただし、取引内容から提案できない場合もあります。例えば、取引内容が「星野直也への支払い」となっていると提案されません。(クラウド会計からすると星野直也が何かがわかりませんので、提案できない)この場合は、星野直也への支払いは税理士の顧問料なので「支払報酬料」として登録すると、次回からは勘定科目を支払報酬料で自動仕訳されます。

会社の取引は毎月8割方は同じ内容ですので、使えば使うほど仕訳内容を学習していき会計入力が自動化されていきます。その結果、入力の手間を大幅に削減することができます。

■理由2:入力ミスがなくなる

<インストール型>

インストール型では自分で入力するので、どうしても日付や金額などの入力ミスが発生します。例えば接待交際費100,000円を「1,000,000円」と「0」を多く入力ミスすると経費が900,000円多くなってしまいます。「今月は売上が多かったのに思ったほどの利益が出ていない」ということがあり得ます。ただし、最終的にチェックをすれば入力ミスに気付きますが、間違いがあるとチェックに時間がかかります。

<クラウド会計>

自動取得・自動仕訳ですので、日付や金額を入力することがありません。そもそも入力ミスが発生しません。

■理由3:データ連携は銀行口座・クレジットカードだけじゃない!

クラウド会計の特徴は、次のように連携できるサービスが多くあることです。

電子マネー: SMART ICOCA、PiTaPa、nanaco、WAON、楽天Edyなど

 →領収書が出ない電車代もデータ連携できる。

通販:Amazon、ASKUL、楽天市場(my Rakuten)、Yahoo!ショッピングなど

 →Amazon・ASKULでの購入も取引ごとにデータを取得。

ビジネス:Airレジ、スマレジ、Square、PayPalなど

→飲食店や小売店で使われるPOSレジやカード決済に対応しているので、レジ締めを終えた売上データをそのままクラウド会計に取り込むことができます。

■理由4:税理士と会計データを共有できる

<クラウド会計>

複数名で同時にデータを共有できるので、社員間や社外の税理士とのコミュニケーションが容易になります。例えば、決算前にリアルタイムで会計データを把握できるため、より有効な節税対策のアドバイスをすることができます。

<インストール型>

インストール型では、お客様が入力した会計データをメールで送信してもらい、税理士事務所がチェックして会計データを返信するとのやり取りが必要になります。

■理由5:Mac・タブレット・スマホでも使える

インストール型の会計ソフトはMacにほとんど対応していませんが、クラウド会計はOSを問わず使えます。さらに、タブレットやスマートフォンでも使えるのでスキマ時間に入力できます。

外出先からも操作できますので、取引先との商談中に現在の預金残高をスマートフォンで確認することもできます。(銀行口座を同期させるので、複数の銀行口座があってもクラウド会計にログインするだけで預金残高を確認することが可能)

(Macの注意点)

多くの銀行ではネットバンキングの「電子証明書方式」はWindowsにしか対応していませんMacでは「電子証明書方式」に対応していません。)多くの法人・個人事業主がネットバンキングを電子証明書方式で申し込んでいることが多いです。この場合は、銀行口座の取引明細を自動取得することができないので要注意です。クラウド会計で自動取得する場合は、Windowsのパソコンを用意する必要があります。早くMacも電子証明書方式に対応してほしいものです。

(タブレットの注意点)

「iPadなどのタブレットだけでクラウド会計ができますか」とのご質問を受けることがありますが、タブレットだけでは難しいと思います。自動取得した取引を登録することは問題なくできますが、自動取得できない取引(現金で支払った領収書など)は手入力する必要があり、タブレットでは手入力しにくいです。中古の安いパソコンでもいいので、パソコンがあった方が良いです。

■理由6:バックアップも万全、アップデート不要

会計データはラウドサーバー上に保管されますので、パソコンの故障や災害等で大切な会計データが消失するリスクを減らすことができます。常に最新のシステムなので、税制改正に伴うバージョンアップなどの追加費用もかかりません。

2 クラウド会計を使うと何が変わる?

2-1 月次決算が早くなる

税理士事務所が行う月次決算では、早くても翌月10日ごろに前月の業績が確定します。経営者からするともう少し早く情報が欲しいところです。経営の意思決定をする判断材料として月次決算は重要だからです。

なぜ、税理士事務所の月次決算は時間がかかるのか

①会計入力に時間がかかる

②月次決算=試算表と思っているので、1円単位で確定させることを前提にしている

税理士事務所はお客様に渡す試算表を正確に作ることに力を入れています。

・会計入力が終わらないと月次決算も完了しない

・売上の請求金額が決まるまで月次決算が完了しない

・つまり、試算表が完成しないので月次決算が完了しない

との構図になっています。たしかに試算表は銀行融資に必要となるので正確なものにすることは重要です。しかし、経営判断のために使うのであれば1円単位で確定させる必要はありませんし、利益が1万円ズレていても経営判断に影響はありません。

クラウド会計を使うと「大きな数字の流れを早くつかむ」ように意識が変わります。

取引の大部分(銀行口座・クレジットカードなど)が自動取得されます。自動化されない取引のうち金額が大きいものだけ手入力することで、翌月の5日以内に「経営者が知りたい」月次決算を完成させることも可能です。その後も確定した取引を随時処理することで月次決算を修正していき、最終的に試算表が完成します。

2-2 経理部門や税理士費用のコストダウンにつながる

■経理部門

クラウド会計の自動取得・学習機能によって、経理の仕事はコストダウンと業務効率化が実現可能です。人件費を下げることもできますし、空いた時間を別の業務に充てることもできます。

さらに、クラウド会計を使うことで経理をシンプルにすることができます。

ベテランの経理担当者が退職するときに会社の経理が止まることがあります。経理担当者が優秀であるほど独自のエクセルなどを使って管理しているため、経理経験の浅い人が引継ぐと「今までの経理処理がわからい」「たくさんのエクセルなどが残されている」というようなことが生じます。しかし、クラウド会計は簿記の知識がなくても使えるように作られており、常に税理士とデータ共有していますので、引継ぎによる経理ストップを防ぎやすくなります。(個人的には多少は簿記の知識があった方が良いとは思いますが、その会社の取引に関する簿記の知識があれば十分です)

■税理士費用

税理士に通帳コピー・領収書・請求書など渡して記帳代行を依頼している場合は、記帳代行料がかかっています。仕訳数(取引量)によって料金は変わりますが、数千円から数万円が多いです。クラウド会計を使うと大部分の取引を自動取得しますので、自動取得されない取引だけを記帳代行してもらうこともできます。こうすれば税理士事務所での仕訳数は大幅に減りますので記帳代行料も下がることになります。さらに自動取得される通帳コピーなどを郵送する手間も省くことができます。

3 クラウド会計のデメリット

3-1 ランニングコストが常に発生する

インストール型の会計ソフトは一度購入すると、バージョンアップをしなければ追加で料金は発生しません。ただし、税制改正(消費税率が8%から10%になるなど)があるとバージョンアップ費用がかかり、新バージョンをインストールして旧バージョンのデータを新バージョンのデータに移行する手間もかかります。

クラウド会計は月額利用料がかかるので使い続けると常に料金がかかります。上記「1 クラウド会計で経理がラクになる6つの理由」から、これだけのことができるのであれば月額利用料は気にならないとも言えます。

3-2 現金取引は手入力

大部分が自動取得されると言っても、現金での支払いの場合は従来通り手入力が必要になります。

現金取引はスキャナやスマホで読み取りすることで効率化する。

現金取引はデータがないのでそのままでは連携することはできませんが、効率化することはできます。具体的には、スキャナやスマホを使って読み込むと「日付、金額」は、だいたい読み取ってくれます。あとは、勘定科目と摘要を入力すると仕訳が完了しますので、普段はスキマ時間で読み込ませておき、まとめてパソコンで登録するなど、ひとつひとつ入力するよりも効率化することができます。

(ただし、スキャナによる読み取り精度が高くないので、今後に期待かと思います。)

現状では、できるだけ現金取引を少なくしてクレジットカード・電子マネーにより決済する方が自動仕訳機能を使えるので、そちらをオススメしています。

3-3 セキュリティの安全性

クラウドデータが漏洩しないかと気にされる方もいらっしゃいますが、クラウド会計は銀行・クレジットカードのデータを同期・連携することを前提で運営されていますので、金融機関やクレジット業者と同等レベルでセキュリティ面での安心・安全な体制をとっています。

インストール型の会計ソフトでもパソコンやUSBメモリの故障・紛失などのリスクはつきまとうので、セキュリティに問題があるのは同じと言えます。

4 クラウド会計導入の注意点

クラウド会計はメリットが多いですが、すべての会社にとって業務効率化ができるわけではありません。取引量が少ない場合はインストール型の会計ソフトに入力してもそれほど手間にはなりません。

当事務所では、最初にお客様の事業内容をヒアリングし、クラウド会計とインストール型の会計ソフトとどちらが良いかをご説明しています。クラウド会計が良い場合はマネーフォワードクラウドとfreeeのどちらが良いかをご提案しています。

クラウド会計によって連携しているサービスが異なります。例えば、freeeは電子マネーWAONに対応していませんが、マネーフォワードクラウドではWAONに対応しているなど、自社で使っているサービスが連携できるかを確認する必要があります。ただ、銀行口座やクレジットカードに関してはほとんどが対応済ですので、あまり気にしなくても問題はないかもしれません。

5 まとめ

クラウド会計の多くは、30日無料期間がありますので、まずは試してみてください。一度使い始めた会計ソフトを別の会計ソフトに切り替えるのは大変です。会計データの移行が面倒ですし、操作方法や画面の見た目が変わると使いにくく感じてしまいます。

クラウド会計はどこのサービス(マネーフォワードクラウド、freee、その他もあります)を選択するかでも業務効率化が変わってきます。クラウド会計とひとくくりにされますが、やはり各社違いがあります。連携サービスはどんどん増えてきていますので、今は連携していなくてもそのうち連携する可能性はあります。クラウド会計は税理士の意見を取り入れながら開発を続けているので、今後ますます便利になっていくと思われます。