メリットが多い新創業融資制度で創業融資を獲得する!

[記事公開日]2017/08/16
[最終更新日]2017/10/25

創業融資を受けたい場合、次のようなお悩みがありませんか。

〇どの金融機関に申し込めばいい?

〇金利っていくらぐらい?

〇いくら借りられるの?

〇そもそも貸してもらえるの?

しっかりと“準備”して創業融資を申し込めば、難しいものではありません。

では、どのような準備が必要か見ていきましょう。

1 創業融資は3種類

創業融資は、次の3種類があります。

①日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

今回はこの日本政策金融公庫の新創業融資制度をご紹介します。

②都道府県・各市区町村などの「制度融資」

「都道府県・各市区町村」と「銀行」と「信用保証協会」の3つの機関が協力して融資します。こちらは3つの機関がそれぞれ審査しますので融資実行まで時間がかかってしまいます。

③民間金融機関の「創業融資」

創業前後の実績がない創業者に融資することは、民間の金融機関にとってはリスクが高いため、あまり創業融資を行っていません。しかし、すべての銀行ではないですが、信用金庫などは積極的に創業融資を行うことがあります。

京都信用金庫の創業支援融資制度「ここから、はじまる」

https://www.kyoto-shinkin.co.jp/business/start/

2 日本政策金融公庫とは

政府が100%出資している政府系金融機関(旧国金)です。民間の銀行から融資を受けにくい中小企業、創業前や創業後まもない実績のない起業家が利用しやすい金融機関です。政府系の金融機関だからこそ民間金融機関が融資をしにくい方に融資することができます。実際に多くの方が創業融資を受けていますので、創業融資はまず日本政策金融公庫が候補になります。今回は、日本政策金融公庫の融資の中から、知っておくべき創業融資として「新創業融資制度」をご紹介します。

*実績とは「過去の決算書」のことです。金融機関が融資を行うかの判断材料の一つです。

3 新創業融資制度のメリット・デメリット

3-1新創業融資制度って?

法人だけでなく個人事業主も融資を受けることができます。

まずは、新創業融資制度の概要の一部を確認しましょう。

(詳細は日本政策金融公庫をご確認ください)

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html

対象者①

新たに事業を始める方

 または

事業開始後、税務署に2期分の申告をしていない方

対象者②

次のうちいずれかに該当

・雇用の創出を伴う事業を始める方

・現在6年以上勤めている会社と同じ業種の事業を始める方

など

*なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回の融資分も含む)の方

自己資金

・「新たに事業を始める方」または「事業開始後、税務署に1年目の申告をしていない方」

 創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要

*ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします

融資限度額

3,000万円(うち運転資金1,500万円)

返済期間

各種融資制度で定める返済期間以内

利率

基準金利

担保・保証人

原則不要

3-2メリット

■メリット1:無担保・無保証

担保なし、保証人なしで借りることができます。万が一、会社が倒産したら融資の返済はしなくてもいいので、創業する方にとっては大きなメリットです。

通常の融資では「担保なし・第三者の保証人なし」でも「社長個人の代表者保証」が必要になるケースが多いです。この場合、会社が倒産したら社長個人が融資の返済をしなくてはいけません。

■メリット2:自己資金が1/10以上

450万円の融資を申し込む場合は、自己資金が50万円以上あればOKです。これは創業資金総額が500万円でその1/10の自己資金50万円を用意していますので、融資申込額は450万円になります。制度融資では、自己資金が所要資金の1/3必要、または自己資金の範囲内となる場合もありますので、自己資金が1/10以上は創業しやすい金額と言えます。

■メリット3:申込から融資実行まで早い

融資の申込をしてから1か月から1か月半ほどで融資が実行されます。通常の銀行融資の場合は2か月から2か月半はかかるので、日本政策金融公庫の新創業融資制度は非常に早いと言えます。税理士が紹介する場合はさらに1週間ほど融資実行が早くなります。

3-3デメリット

■デメリット:金利が少し高い

利率は金利情勢によって変動しますが、およそ2.5%~3%となります。少し高く感じますが、実績のない創業時に無担保・無保証で借りられることを考慮すると決して高くはありません。

4 新創業融資制度の注意点

■注意点1:許認可が必要な業種

原則として、営業に許認可が必要な業種の場合、許認可がおりないと融資は実行されません。許認可の申請をしていれば、融資の申し込みや審査は可能です。融資ができるかの審査まではしてもらえます。

融資を受けて許認可の申請費用を払おうと思っていたのに、許認可が下りる前には融資が実行されず、自分で申請費用を用意しないといけないことになります。許認可によっては申請から許可まで2か月ほどかかるものもありますので、スケジュールを立てて申請・融資の準備をしてください。

次のような業種は許認可が必要になります。

・建設業許可

・宅建業免許

・飲食業許可

・派遣業許可

など

ただし、許認可がおりるまで融資実行されないかは業種にもよりますので、日本政策金融公庫に事前確認することをおすすめします。

■注意点2:融資の上限は1,000~1,500万円?

制度上、融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)となっていますが、実際は1,000万円が目安になります。自己資金が多い・事業計画がしっかりしているなどの場合は1,500万円が上限になるとお考えください。多くの創業者は数百万円の融資額が多いです。創業する前後の方に3,000万円を融資することは現実的に難しいようです。

■注意点3:会社設立前に申込できない

会社設立後から融資の申込が可能になります。設立登記申請中は申込ができません。

5 実は新創業融資制度は特例措置

「新創業融資制度」は、次の各融資制度を利用する場合に取扱いできる無担保・無保証人の特例措置です。

・新規開業資金

・女性、若者/シニア起業家資金:女性・35歳未満・55歳以上が対象で、金利が低い

・再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)

・新事業活動促進資金

・食品貸付

・生活衛生貸付(一般貸付、振興事業貸付および生活衛生新企業育成資金に限ります。)

・普通貸付(食品貸付または生活衛生貸付(一般貸付)の対象となる方が必要とする運転資金に限ります。)

・企業活力強化資金

・IT資金

・海外展開・事業再編資金

・地域活性化・雇用促進資金

・事業承継・集約・活性化支援資金

・ソーシャルビジネス支援資金

・環境・エネルギー対策資金

・社会環境対応施設整備資金

・企業再建資金(第二会社方式再建関連に限ります。)

と、たくさんの融資制度の特例措置です。

・・・?

日本政策金融公庫の新創業融資制度のWebサイトにこのように書かれていますが、わかりにくいですよね・・・

新規開業資金を例にご説明します。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html

 

新創業融資制度

新規開業資金

対象者

創業2年以内の方

創業7年以内の方

融資限度額

3,000万円(うち運転資金1,500万円)

7,200万円(うち運転資金4,800万円)

自己資金

10分の1以上の自己資金が必要

自己資金要件なし

保証人・担保

無担保・無保証

担保や保証人が必要

〇創業後1年目に自己資金100万円で融資2,400万円を申込む場合を例として見ていきましょう。

・創業1年目ですので、「新創業融資制度」も「新規開業資金」も該当します。

自己資金が100万円ですので新創業融資制度では900万円(1/10要件)が融資上限額になります。新規開業資金は自己資金要件がありませんので残りの1,500万円を融資申込みします。

新創業融資制度の融資申込額900万円は無担保・無保証ですが、新規開業資金の融資申込額1,500万円は担保や保証人が必要になります。

このように新創業融資制度を単独で利用するのではなく、「新創業融資制度を利用して新規開業資金に申し込む」ことになります。これが各融資制度の特例措置の意味です。

6 新創業融資制度を獲得するための3つのポイント

■ポイント1:自己資金は多いほど有利

自己資金を貯めるのは難しいですが、自己資金が貯まらなくて創業のタイミングが遅れるのも良くありません。その意味では、自己資金が1/10で申し込めるのはメリットです。しかし、お金を貸す側からすると自己資金が多いと「創業に向けてしっかり準備している」との好印象を与えることができ、創業に対する本気度が伝わります。

<いくら自己資金があればいいの?>

融資申込額の1/3の自己資金は必要と考えます。

実は2014年に新創業融資制度の要件が緩和されました。それまでの自己資金要件は創業資金総額の1/3以上でしたので、現在の1/10以上は大幅に緩和されたと言えます。

緩和前の1/3はいかにハードルが高かったかを確認しましょう。

開業資金がトータルで900万必要の場合

緩和前:自己資金を300万円用意して、融資を600万円申込む

緩和後:自己資金を90万円用意して、融資を810万円申込む

300万円を1年で貯めるのは難しいですが、90万円なら1年で貯めることは可能ですよね。

<緩和されたのに変わっていない?>

確かに制度としての自己資金要件は緩和されました。これは国の政策として創業を後押したいという意図があるからです。その意味で創業者の間口を広げて創業しやすい環境を作ったと思われます。実際に自己資金が少なくても素晴らしいアイデア・ノウハウや確かな事業計画を持っている方は創業融資を受けていますが、このような方は少数です。実績のない創業者を審査するときに、自己資金の多い少ないで創業への覚悟や思いを判断する一つのポイントになるのは間違いありません。目安として緩和前の1/3は有効だと考えます。必ずしも1/3以上必要ではありませんが、1/3に近い方が有利です。

■ポイント2:業種経験をアピール

創業する事業について今までに経験があるかが審査で重視されます。貸す側としては創業するビジネスが成功するか(成功して貸したお金を返済してくれるか)を見ています。経験のあるビジネスだと次のような状況でスタートできます。

①業界のこと、今後の市場ニーズを把握している

②人脈があり、得意先や仕入先を確保している、または確保しやすい

③そのビジネスでの自分の強み弱みを理解している

このように業種経験があるとビジネスが成功する確率が高くなり、審査で有利になります。

<何年あれば業種経験があると言える?>

新創業融資制度の要件のうちに「現在6年以上勤めている会社と同じ業種の事業を始める方」がありますので、6年間の経験が一つの基準になると考えられます。しかし、単に年数が長ければ良いというわけでもありません。勤めている期間に次のような「何を経験したか」が重要になります。

①店長や部長など責任ある立場にいて、経営にタッチしていた

②現場の見積書を作成する、仕入れを任されていた

③スタッフの求人・面接をしていた

④得意先の新規開拓・マーケティングで社内成績トップだった

たとえ3年間でもこのような経験があれば審査で評価されるでしょう。業種経験が長い短いよりも事業経験を具体的に数字などの根拠を入れた「創業計画書」を作りアピールしましょう。

<未経験だと無理?>

事業経験のないビジネスを始めたい方は創業融資が難しくなりますが、無理ではありません。貸す側は「やったことがないのになぜ始めたいのか」「やったことがないのに成功すると思っているのか」と考えます。例として、英語に関係する仕事をしていないが、英会話教室を始めたい場合は、次のようなアピールをする必要があります。

①直接の事業経験はなくても今までの経験と関連することがある

・学生時代に海外留学を〇年間していた

・教員免許を持っている

・普段からPTAや町内会の活動に積極的に参加している(町内の人に自分を知ってもらっているため、口コミが期待できる)

②事業について自分なりに業界の勉強をしている

・個人で教室を開く場合と、フランチャイズに加盟して教室を開く場合の違いを調べ検討している

・小学校英語教育の義務化が予定されているため、今後ますます使える英語としてリスニングやスピーキングが重要になる

③資格があるビジネスなら必須でなくても資格を取っておく

・TOEICで高得点を取る

・英語以外の外国語も勉強している

④事業のリスクと対策を考えている

・生徒をどうやって集めるかが最大の問題なので、「○○の方法で生徒を集める」と準備しておく

このように多少強引でも事業に関連する点を強調した「創業計画書」でアピールしましょう。

経験がないからこそ自己資金を貯めておくことで本気で始めたいことを表すことも重要です。

どうしても自分だけではアピールが弱いときは、事業経験のある人と共同経営する(できれば少しでも出資してもらい、役員に迎え入れる)ことで事業経験の無さを補うことも検討しましょう。(共同経営でもその人が辞める可能性があるので、事業経験の無さを補いきれるわけではありません)

■ポイント3:事業計画書の重要性は3年分の決算書と同じ

創業する方は事業がスタートしてからのイメージをお持ちだと思います。

〇売上はいくら上がる。うまくいけば月100万円。悪くても月50万円は固い。実は見込み客がすでに10件ある!

〇借りたお金で仕入れをして、残ったら広告宣伝に使いたい。でも、ほしい備品もあるし、多めに借りておこうか。

〇とにかくうまくやっていく自信がある!

事業計画書を作る前は漠然としたイメージではないでしょうか。このイメージを文章や数字に落とし込んで、事業計画書を作成します。

<なぜ事業計画書が必要なの?>

金融機関は貸したお金が返ってくるかを審査します。返せるかどうかは、過去の決算書で判断するのですが、創業者には決算書がありません。そこで決算書の代わりに「事業計画書」が審査の判断材料になります。ちなみに日本政策金融公庫では「創業計画書」が事業計画書に当たります。

<事業計画書は決算書と同じ?>

創業後に何年か経過して融資を申込むときには、直近3年分の決算書を見られます。

〇3年間で事業がどうのように推移しているか

〇黒字か、赤字か、赤字の原因は何か

〇純資産はプラスか、債務超過か

〇キャッシュが回っているか、滞納はないか

〇回収できていない売掛金はないか

〇適正な在庫か、在庫が増えすぎていないか

など、様々な審査項目があります。審査項目は他にもありますが、金融機関が融資するためにはこれぐらい慎重に判断しています。その3年分の決算書に該当するものが事業計画書ですので、どのくらい重要かが分かると思います。

7 まとめ

自己資金、業種経験、事業計画書が審査のポイントとしてご紹介しましたが、3つとも完璧に満たしている方はほとんどいません。

〇自己資金は少ないが融資を受けた

〇業種経験で特別な経験をしていないが融資を受けた

このような方は実際にたくさんいます。これらの方に共通するのは事業計画書がしっかり書けていたことです。貸す側はリスクはあるが大成功するビジネスではなく、堅実なビジネスをする人にお金を貸したいものです。創業融資はいかに準備するかで決まります。金融機関も融資したいので、審査する人を貸したいと思わせるような事業計画書を作りましょう。